LA SPORTIVAの名作クライミングシューズ「MEGA」のカラーリングをデザインソースとした2023年限定モデルのアプローチシューズ「TX4 R」が発売される。
かつてその「MEGA」を履き、数々の偉業を成し遂げた伝説のクライマー シュテファン・グロヴァッツ氏が緊急来日。
今回は、かつての相棒「MEGA」についてインタビュー形式で語ってもらった。
1965年3月22日生まれ ドイツ出身のクライマー・冒険家
コンペシーンでは20代で当時世界最高と言われた大会「アルコロックマスター」を3度制覇。ロッククライミングでも世界の難壁に挑戦し多くの新ルートを開発。日本では小川山「Ninja(5.14a)」の初登、「グロヴァッツスラブ(初段)」の課題を残したことなどで知られる名クライマー。現在は冒険家として精力的に活動している。
久しぶりの来日ですね。日本の印象は?
日本は私の好きな国のひとつです。自然や人を尊敬するところや、人々のメンタリティーが好き。日本食も好きだね。
アジアは他のどこの国とも似ていないものを持っていて、いつも新しい発見がある。今回は日本の岩に行く予定はないよ。87年に小川山を登って以来、日本の岩には登っていないね。
あなたに馴染み深いシューズがここにあります。
LA SPORTIVA MEGA(1986) ・・・グロヴァッツ氏が開発に携わった1986年発売のクライミングシューズ。当時グロヴァッツ氏はこのMEGAをメインシューズとしていた。
このシューズは、リリースされた80年代中盤、他のシューズとはまったく異なるものだったんだ。
ベースは(MEGAの前進にあたるモデル)マリアッハ。とても良いシューズだったが、もっとヒールフックが出来てダウントウのシューズを作ろうと思った。まずはヒールに注目して、岩場でトライして、変更して…とパーツごとに開発をしていった。
MEGAの開発期間は6ヶ月。(かつてLA SPORTIVAの本社と工場があった)テゼロという場所は、岩場と工場がすぐ近くにあり、“ トライ→変更”のプロセスが簡単に出来る環境だったんだ。
毎回新しいモデルを作る時には前のモデルより良い物を作りたいと思っている。何事もそうだが全部トライアンドエラーだったね。
デザイン、特にカラーリングは特徴的でした
1978年にグッドデザイン賞を受賞
MEGAのカラーリングは当時、流行っていた配色を取り入れた。当時はカラフルな時代だったよ。
今のシューズはダウントウが出来ているから新品でもすぐに履けるけど、昔のシューズは、最初5分履いて、休んで、10分履いて…と馴らしていくものだった。最初に水につけて濡れた靴を履いて乾くまで履き続け、自分の足型に馴染ませるクライマーもいたよ。
そのMEGAのデザインを踏襲したのが、このTX4 Rです
(嬉しそうにシューズを見つめ、すぐに足を入れる)
MEGAよりずいぶん履きやすいね!
年をとったから、履きやすいシューズが好みになってきた、今の僕にはピッタリだよ。
自身のブランドも手がけた経験から、LA SPORTIVAとはどんなブランドであると感じますか?
LA SPORTIVAはリーディングブランドだと思う。
経験もあるし、山にまつわる全てのカテゴリがあるのも特徴で、このレベルまで到達するには、長い年月が必要だよ。
クライミングシューズはクライマーにとって一番重要な道具であり、シューズが合わないと、最高のパフォーマンスは出せない。
だからクライマーは、自分に合うシューズやブランドを見つける必要がある。
LA SPORTIVAはどんなクライマーでも必ず合う靴がみつかるようにラインナップされている。
LA SPORTIVAの大きいアドバンテージは、制作できる環境、つまり工場が近くにあるということ。
クライミングシューズはとても繊細で、1000足作成したら2足が少し似ているかな?くらいのものしか作れない。だから常に開発者が側でクオリティを注視する必要があるんだ。
現在は冒険家として活動しています。次の目標は?
クライミングはまだ大好きだけど、クライミングは冒険を達成するための手段でしかない。もっと環境に負荷をかけないかたちでの、更なる冒険を模索しているよ。
5月にトルコ・イラン・タジキスタンの三カ国に3ヶ月間行く予定なんだ。
日本のクライマーにメッセージを
本気のクライマーじゃなくても、常にパッションを持って挑んで欲しい。
クライミングは思考とフィジカルの融合、頭で考えながらするスポーツ。身体と頭のハーモニーが必要なんだ。
自分自身に何がしたいのか問いかけて、モチベーションを保つことが大事。結果だけを気にするのはもったいない。自分なりのスタイルでクライミングと向き合っていって欲しいね。
撮影場所:日本用品株式会社 ARCO BASE